今までのモテ期の記憶

人には三回もてる時期がやってくるという。
思い返してみると、私のはもう終わっているかもしれない。
それも、人生のごく早い時期において。
私が最高潮にもてたのは、幼稚園である。

もともと私が通っていたのは私立のちょっといい幼稚園。
みんなお洒落なベレー帽をかぶるのだ。
エンジのフェルトのやつ。
なんと言ったってそれが制服だから。

年中までそこに通い、年長で引っ越すことになった。
幼稚園も変わった。
うんと辺鄙な幼稚園になった。

素っ裸の園児たちが、狭いビニールプールにぎゅうぎゅうに詰め込まれて水遊びをするような野性味あふれる幼稚園だった。
そこでの私は、都会から来たお嬢様だった。

それはそうに違いない。
セミを手づかみでつかまえてはしゃぎまわっているようなワイルドな幼稚園児の中では、ベレー帽に慣れた子供はお嬢様に見えよう。
だから、私は何もしなくてももてたのである。

二回目のモテ期は、小学校六年生だ。
私は塾に通っていたので、頭がよかった。
まあそれも何もしない子に比べればの話ではある。

小学生というのは、「運動ができる」「頭がいい」のどちらかの要素がもてる基準になる。
男子の場合は前者が有力であったが、女子の場合は後者だけでも意外といけた。

今思うと、そんなものも大層な偏見である。
だからここでも、私はなにもしなくてももてた。

そして三回目。
これは私は知らない。

でも、友人の話によると確かに三回目があったというのだ。
「あの時もててたよね。」と言われる。
結構よく言われる。

しかし、言い寄られた記憶が全くない。
本当に、全くないのだ。

だからもし三回目が事実だとすると、そしてそれが知らないうちに過ぎてしまったのだとすると、私は俄かに不安になるのである。
私はもうもてないのではないか。
せめて記憶があれば、思い出して楽しめたものを。

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