実らなかった恋を思い出す理由

夢に、昔好きだった人が出て来る。
もう何年も前の話なのに、いまだに出てきては何だか切ない気持ちにさせられる。
私は本当にその人が好きだったのだが、気持ちに応えられないと言われ、それはそれは悲しい思いをした。

どうして忘れられないのか、時々考えてみては、ああ、実らなかった恋だからだな、という結論に落ち着く。
実らなかった恋というのは、気持ちが最高潮に盛り上がったところで記憶が留められているから、いつ思い出しても臨場感がすごい。
実ってしまった恋というのは、好きだのなんだのでどきどきする気持ちをいったん通り越し、どんどん安定していってしまう。
お互いの嫌なところも見えてくるし、関係を維持させるための努力や妥協も必要になってくる。
だから思い返すと、しんどい記憶ばかりという可能性も出て来るのだが、付き合う前でとまっている思い出というのはいつまでたってもきれいなままだ。
それで、ああなっていたらよかったのに、などと、悲しい結末の映画のクライマックスシーンを何度も見返すように、夢に何度も出て来るのだ。
要は、必要以上に美化されている。
色々と聞き込みをしていると、これは私個人に限ったことではなく、世の中の多くの人が感じていることらしい。
きっと実際に付き合えていたならば、過去の恋愛の一つとして振り返ることも少ないのだろうけれど、あまりに美化されてしまっているので、あれが今までで一番の恋愛だったと言われるケースが多い。
もちろん、美化されているという事実は皆気づいているのだ。
気づいていながらも、その思い出に酔いしれてしまう。
自分のアーカイブとは、そういうものの積み重ねかもしれない。

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